「それって、結構お得じゃない?」
思ってもない返事に肩をすくめて返す。
「イヤ、そーでもないんだな、これが」
「人の感情が色で見えるって便利だと思うけど」
知ってる人の少ない私の能力……能力って役にたつことを言うんだよね、フツウ。
だけど、ねぇ?
「曖昧なんだよね、色って。微妙な感情までかかるワケじゃないしさ。大体、その人が怒ってるか喜んでるかとかって顔見てわかることでしょ? 私だって、その方が早くて楽」
害はないが利益もない能力だ。
目の前にいる今の友人のまとった色は……淡い碧色。
これがどんな感情を映しているのかなんてさっぱりわからない。
この友人は普段から感情の起伏も少ないし表情にもでないタイプなのだ。
とっぴな告白にもたいして動揺してないことは確かだ。
「そうかも。ま、個性ってコトで」
こんな変な能力をすんなり受け止めてくれるのはありがたいと言うべきか。
ゆるっと微笑う友人に、こっそり安堵の溜息をついた。
「今日の最高の運勢は蟹座のアナタ。ラッキーカラーは青です」
毎日毎日、御利益があるんだかないんだか良くわからないまま耳に入る朝の情報番組内の占い。
ぺし、と自分の頬をたたく。
運勢最高。って言うのはさておきラッキーカラーが青になる日をまっていた。
験担ぎ。というかきっかけ。
決めていた。
実行が決まればさっさと仕度するに限る。
手早く終えて時計を見る。
いつもより少しだけ早い時間。
「よし!」
キブン高めて、いくぞ。
「おはよ」
寝ぼけ顔。まだ脳が発動していない相手の肩をたたく。
「……ん」
反応、鈍いのもいつも通り。
これでも働いている時はかなりてきぱきなのだけど。
纏っているのは淡い青。
憂鬱の青と言うほど強くない。蒼の方がしっくりくるかも。なんとなく。
さて。
大きく息を吸う。
「あのね、毎度のことながら唐突で悪いんだけどね……」
ふにゃとした顔がこちらを向く。
息を吐き出す。
「スキだよ」
変わらない冷静な蒼色。
こんな時はちょっとムカつく。
ふぃ、と空を見上げてる。
「……は、い?」
顔をこちらに向けまじまじと見つめる。
やっと脳にまで達したのか? 遅。
纏う色がふやふや変わりはじめる。
今まで見たこともなかった薄紅色。……すごく淡いけれど。
すごくキレイ。
この能力に感謝したくなるくらいに。
「目、覚めた?」
「……不意打ちすぎ」
ニガワライ。
ま、応えはゆっくり待とう。
何となくシアワセな気分で空を眺めた。
Jul. 2003