Fortunately be



 トモダチ、の結婚式。
 実際おれたちは、世間一般からは難しいと言われる『男女』の友情をうまくやってきていた。
 小さくて、元気で、かわいくって。
 でも、トモダチだった。
 カノジョに、したいと思ったことは一度もない。
 そのあたり、ダンナになるカレシも理解があり、二人で会うことをイヤな顔しなかったというのだから、出来たオトコだ。
 祝福のキモチで、ここに座っている。
 新婦の共通の友人たちと。
 ドレスのせいか、化粧のせいか。
 それともダンナの隣でシアワセそうに微笑っているせいか。
 いつもよりかわいく見える。
 こちらの視線に気づいたのか舌をちろとだして笑う。
 ばぁか。
 声にはせず、口だけを動かして言う。
 ちゃんと伝わったらしい。
 ふくれっ面。
 花嫁がなんて顔してるんだよ。


 宴も終わり間近。
 新婦の手紙。
 はじめて、見た。
 泣き顔。
 泣き言は聞いても、泣き顔は見たことがなかった。そういえば。
 でも、これはシアワセな涙。
 今までの、シアワセの証。
 そして、これからの。
 どきどき、する。
 今まで見た、どの顔より。
 ……誰より、きれいに見える。
 一瞬。
 おとされる。
 わかってる。
 これは、紛いの。
 ただの、錯覚。
 突き刺さるような、手放したくないキモチ。
 抱きしめたいほどに。
 か細くて、シアワセにしたくなる。
 父親が潤んだ瞳で、花嫁の肩を抱く。
 ……きっと、あれ近いキモチなのだ。


「ありがと、タツキ。来てくれて」
 新郎と並んで。
 涙の跡が少し残ってるな。
 でも、笑顔。
「ばぁか」
「また、言うし」
 花嫁が、ふくれっ面するなって。
「シアワセになりな、フジノ……呼び方はかえなきゃな」
 今更、ムリか。慣れきってるからな。
「いーよ。もう。タツキにそれ以外の呼び方されると気づけなさそう」
 ニガワライして。
 さっきの、涙なんかなかったみたいだ。
 やっぱり、錯覚だ。
「後藤さん、おめでとうでした」
 新郎の方に挨拶する。
 何度か一緒に遊びに行ったりして、仲良くはなっている。
「今日は、ありがとうございました」
「コチラコソ。……じゃ、な。フジノ」
 二次会までどこで時間をつぶそう
 そんなことを考えて外へ向かう。
 ぅぐ。
「おい、フジノ」
 衿を後ろから引っ張られる。
 首吊らせる気か?
「これからも、変わらないからねっ」
 はい?
 怪訝な顔をして振り返ってやる。
「かわらないからねっ。遊びに行こうね。で、遊びに来てね」
「何回も言われたいわけだな、フジノ」
 何を必死になってるかと思えば。
 言われて、嬉しいことは確かだけれど。
 ダンナもあきれ顔してるぞ?
「ばぁか。またあとでな」
 べし、と頭をたたいて。
 文句を聞く前に会場をあとにした。


 ほんとうに。
 こころから。
 シアワセが降ることを。
 祈って、やまない。

【終】




Nov. 2001